国島が提唱する、わが国における新しい「トラッド」を、様々な角度から追求していく本ページ。
今回は河合正人さんがプロデュースを手がけたファッション書籍、
『The three WELL DRESSERS』でフィーチャーされたトラッド界の巨匠、鈴木晴生さんが登場。
服飾史家の中野香織さんとともに、これからのトラッドを探ります。
国島が提唱する、
わが国における新しい「トラッド」を、
様々な角度から追求していく本ページ。
今回は河合正人さんが
プロデュースを手がけたファッション書籍、
『The three WELL DRESSERS』で
フィーチャーされたトラッド界の巨匠、
鈴木晴生さんが登場。
服飾史家の中野香織さんとともに、
これからのトラッドを探ります。
中野香織さん(以下中野):いつも鈴木さんにお会いすると、その若々しい装いとエネルギーに感銘を受けてしまいます。そのトラッドファッションへの情熱は、どこから生まれてきているのでしょうか?
鈴木さん(以下鈴木):僕は父がGHQで働いていましたから。小さい頃、家にはアメリカから届く「シアーズローバック」のカタログとか、丸い冷蔵庫とかがゴロゴロ転がっていたんです。そんな環境のなかで知らず知らずのうちに絵を描くようになったり、映画を観るようになったり、カルチャーへの興味や愛情が培われていったんだと思います。
河合正人さん(以下河合):鈴木さんをはじめ『The three WELL DRESSERS』にご登場いただいた方は、ただの服好きじゃない。ファッションの周辺にある、カルチャーが原点なんですよ。
中野:ほかの人には真似できないオリジンがそこにあるんですね。ある意味で神様に選ばれたというか。
鈴木:恵まれていましたね。戦後まもない時代でしたから、保守的な人たちからは警戒されていましたが、新しい文化の訪れを予感していた人たちは、僕に対して親切にしてくれました。日本におけるトラッドファッションの原点ともいえるVANの洋服も、まさにそういう存在だったように思います。
中野:選ばれた人にターゲットを絞ったということですか?
鈴木:1960年代における洋服とは、いまだオーダーの全盛期。そんななかで“欧米の文化を吸収して装いで表現したい”という団塊の世代に向けて提案した、新しい感覚の既製服がVANだったわけです。当時の若者たちは飢えていましたから、それらがあっという間に浸透していく。ぼうっとしていたら、置いてけぼりになったでしょう。
河合:みんなとにかく早かったですよね。
中野:そんなエネルギッシュな時代に比べると、今は紳士服の伸び代をどこに見出していけばいいか、わからない状態のように思えます。鈴木さんはその打開策については、どうお考えですか?
鈴木:1970年代にも、スーツという洋服が時代遅れになりそうだった時期があります。そのときは化学繊維をはじめとする新しい素材開発との連動で、改めて発展を遂げたのですが。今の時代も、そんな“激変”が求められているのかもしれません。
中野:なるほど。最近の日本では、「パジャマスーツでもいい」というような男性も増えてきていますが、そんな時代に求められる素材とは、どんなものでしょうか?
鈴木:今という時代は、そういうマス層にアピールするよりも、ダウンサイジングをしてでも、本質的な追求をするべきだと思います。たとえばコットン混のラフな質感の生地が、かえってそれを着た人の肌の質感を魅力的に見せるような、“素材の持つ力“を、スーツ生地においても再発見することですね。それにはもっと、目を皿のようにして研究しないといけませんが。
中野:日々観察眼を鍛えなくては。
鈴木:私が尊敬するウェルドレッサーの草柳大蔵さん(1924〜2002年)という方は、いつも自分の肌の質感を柔らかく見せるような、ベージュやタンカラーのスーツを着ていらっしゃいました。彼は雑誌『女性自身』の創刊に参画した天才ジャーナリストなのですが、装いにおいても、自分を最も魅力的に見せる色や素材を研究していたわけです。
河合:もっとクリエイティブにならないといけませんね。
鈴木:国島さんの生地は、間違いのない、よいものです。だからこそ、もっと間口を狭くしても、ディープに攻めてもいいと僕は思うんです。もう、観る人を釘付けにしちゃうような(笑)。キーワードは「新鮮」ですね。
中野:鈴木さんはいつも新鮮ですものね。まさにエバーグリーン。
鈴木:僕はいつも外に出て、新しいもの、面白いものを探しています(笑)。
日本を代表するウェルドレッサーとして海外からも注目を集める3人の紳士、
白井俊夫氏、鈴木晴生氏、鴨志田康人氏。
河合正人氏のプロデュースのもと彼らの装いと人生の軌跡を丹念に追いかけた本書は、
魅力的な男になるためのファッションとカルチャー、
そして生き方をも学べる究極のスタイルブックである。
日本を代表するウェルドレッサーとして
海外からも注目を集める3人の紳士、
白井俊夫氏、鈴木晴生氏、鴨志田康人氏。
河合正人氏のプロデュースのもと彼らの装いと人生の軌跡を
丹念に追いかけた本書は、
魅力的な男になるためのファッションとカルチャー、
そして生き方をも学べる究極のスタイルブックである。
京都府生まれ。1986年に河合正人花事務所を設立し、
フラワーコーディネーターとして活躍。
2000年代後半からは、写真集『JAPANESE DANDY』に代表される
ファッション書籍のプロデューサーとしての活動も開始。
2020年にプロデュースを手がけた『The three WELL DRESSERS』(万来舎)が
大好評発売中。
京都府生まれ。1986年に河合正人花事務所を設立し、
フラワーコーディネーターとして活躍。
2000年代後半からは、写真集『JAPANESE DANDY』に
代表されるファッション書籍の
プロデューサーとしての活動も開始。
2020年にプロデュースを手がけた
『The three WELL DRESSERS』(万来舎)が
大好評発売中。
1947年生まれ。幼少期よりトラッドを愛し、十代の頃は「みゆき族」として銀座を闊歩。
1966年に入社した「VAN JACKET」を皮切りに、「テイジンメンズショップ」、「エーボンハウス」など
錚々たるメンズブランドの企画を手がけ、トラッドの本場N.Y.でも注目される。
1996年に「シップス」に入社。企画部長・執行役員を経て、現在は顧問・メンズクリエイティブアドバイザーとして活躍する。
著書に『男の着こなし最強メソッド 服は口ほどにものを言う』(講談社)がある。
1947年生まれ。幼少期よりトラッドを愛し、
十代の頃は「みゆき族」として銀座を闊歩。
1966年に入社した「VAN JACKET」を皮切りに、
「テイジンメンズショップ」、「エーボンハウス」など
錚々たるメンズブランドの企画を手がけ、
トラッドの本場N.Y.でも注目される。
1996年に「シップス」に入社。
企画部長・執行役員を経て、現在は顧問・
メンズクリエイティブアドバイザーとして活躍する。
著書に『男の着こなし最強メソッド
服は口ほどにものを言う』(講談社)がある。
服飾史家 / 昭和女子大学客員教授
日本経済新聞、読売新聞、Forbes Japanはじめ多媒体で連載記事を書くほか、企業のアドバイザーを務める。
著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)、
『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』(吉川弘文館)など。
東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学特任教授を務めた。
服飾史家 / 昭和女子大学客員教授
日本経済新聞、読売新聞、Forbes Japanはじめ
多媒体で連載記事を書くほか、企業のアドバイザーを務める。
著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』
(日本実業出版社)、
『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』
(吉川弘文館)など。
東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。
ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学特任教授を務めた。